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愛知県のクリニックに勤務する理学療法士のブログ

神経系の機能障害② 神経系の機能解剖

◇神経系の機能解剖学を知る意義について

神経系における理学療法効果は,

神経系の運動メカニズムだけでなく,神経内血流やインパルス伝導といった生理学的変化をもたらすことが可能とされる
そのため,神経系の機能解剖学的・生理学的作用を知ることは安全な介入につながると考えられる.

特に「神経の何をどうするか」という思考に役立つと考える

 

◆神経系の特性

 神経系は,以下の特性をもつ.

 電気的連続性:受容器での刺激をインパルスとして電気的に伝導

 化学的連続性:蛋白質酵素などを運搬

機械的連続性:中枢神経から四肢末端の末梢神経へと至る一つの構成体

        神経系の理学療法において特に理解が必要な特性.

 

◆神経系の解剖

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神経の最小単位:神経線維

神経内膜( endoneurium ):神経線維を覆っている

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神経束:神経線維の集合

神経周膜( perineurium ):多数の神経線維をまとめることで神経束を形成

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神経幹:神経束の集合.触診可能なのはこのレベルから

神経上膜( epineurium ):多数の神経束をまとめることで神経幹を形成

神経間膜(mesoneurium):神経上膜の周囲に存在するルーズな疎性結合組織.

             滑走に貢献する

 

※神経内膜・周膜・上膜は強固な結合組織であり,神経を外力から保護 

 

◆神経束と神経叢の走行
 神経幹には複数の神経束が走行している.この走行は平行ではなく,網目状となっている.これによって神経への伸長ストレスを軽減している
 同様に,神経叢は神経幹が複雑に走行しているのは,神経叢への伸長ストレスを軽減するためとされる

 

◆神経の神経支配

 末梢神経と中枢神経にはそれぞれ

 神経の神経( nervi nervorum )脊椎洞神経( sunuvertebral nerve )が分布している 

 神経の神経は神経上膜に,脊椎洞神経は脳脊髄膜に存在し,侵害刺激を探知する.

 これらの結合組織には血液も供給されているため,神経自体が疼痛を惹起する組織であることがわかる.

 

 

◆神経系の運動メカニズム

 神経系は関節運動に適応する必要があり,そのため3つのメカニズムをもつ

 1.伸張(緊張)

  ゴムのように伸びる機能.神経内膜・周膜・上膜などの神経結合組織や,シュワン細胞の切れ込み,網目状の走行などが伸長に貢献する.

 

 2.運動(滑走)

  神経系の伸長(緊張)を緩和する役割をもつ.中枢または末梢方向へと滑走することで神経全体のストレスの平衡を保とうする.緊張の高い方向へと滑走する.

  滑走は,神経上膜の周囲に存在する神経間膜が主に貢献する.神経間膜はルーズ(ゆとりのある)な疎性結合組織であり,ストレスが加わらない肢位では,元の形状に戻る.

 

 3.圧迫

   外力に対して神経組織が変形することでストレスを緩和する.例えば,脊柱の側屈時,椎間孔において神経系に圧迫が生じるため,このような圧迫力に耐える機能が必要となる. 

 

☆外傷や疾患,不動などによって上記メカニズムの異常が発生すると,機能障害を発生させるとされる

 

◆メカニカルインターフェース  界面組織( interface tissues)

  神経に接する骨や靱帯,筋などの組織をメカニカルインターフェース or 界面組織と呼ぶ
  例:手根管 ⇒ 正中神経のメカニカルインターフェース

 ・病的インターフェース
  メカニカルインターフェースのなかでも,異常な状態を作っている骨棘や浮腫などは病的インターフェースと呼ばれる
  例:骨棘,浮腫,滲出液,血液など

 

 

◇参考文献

・痛みとマニュアルセラピーⅡ -神経系のモビリゼーションー
 理学療法科学 15(3) 117-123 2000

・神経系に対するモビライゼーション
 理学療法学  36(8) 468-471 2009 

・神経系モビライゼーション
 愛知県理学療法士会誌 15(1) 11-14 2003

・神経の動きが機能に影響するのか?
 考える理学療法 評価から治療手技の選択  185-195 

・神経モビライゼーションとスポーツ障害への適用
 臨床スポーツ医学 32(10) 940-944 2014-2015

徒手療法 神経系に対する徒手理学療法
 臨床スポーツ医学 30(12) 1169-1174 2012-2013